これを見ると改正安衛法で求められる「化学物質管理者」と「保護具着用管理責任者」育成方法の参考になると思い、ある化学工場の環境担当者のある日の出来事を記載させていただきます(設定はフィクションですが、法要求事項については自分なりに告示等調べた結果となっております。時間がない人は太文字だけ読んでください)
そろそろ事業所の教育育成計画会議があるので環境関係の法定・環境ISO内部監査資格者育成計画作成を依頼された環境担当者(以下 こてち)が「育成人員については部課長と話して個人を特定しないといけないな」と思い打ち合わせを設定しました(ちなみに安全担当者は別にいます・この事業所は県を跨いだ4つの工場でマネジメントシステムを運営している設定)。
定時2時間前ぐらいに打ち合わせを実施し環境関連の育成人員決定のための行動計画は20分ぐらいで決まり(会議設定1時間)、ボソッと部長が話出しました。
部長「ところで改正安衛法で化学物質管理者と保護具なんちゃらみたいな法定責任者が必要だったはずだけど、いつから必要だったけ?今回の育成計画に盛り込み必要?保護具管理責任者が作業場単位ごとで人数多く確保しないといけないのでやばかった記憶だけど、化学物質管理者も講習がすぐ埋まって育成難しかった気がするので早めに動かないといけないと思ったんだけど?」
課長「あれ2025年からだったと思いますので、今回は必要ないんじゃないですか?なんか他の〜〜〜〜・・・・・・すべき・・・・盛り上げ・・・・・・・・・・・・」
課長が話している間ネットサーフィンして化学物質管理者と保護具着用責任者の選任義務開始時期を調べるこてち・・・
こてち「法令施行日が令和6年4月1日になってますね。」
部長「令和6年って来年じゃね〜か!今回の教育育成計画に盛り込まないと間に合わないじゃん」
こてち「ネットで調べただけなのではっきり断言できません。告示等が他工場の〇〇さん(他工場の環境安全課のこてちの先輩)から送って貰っていたので詳細確認して後ほどご連絡します。後教育訓練計画に織り込むには資格要件等も必要ですね。それも合わせて調べてご報告します。」
部長「じゃ宜しく、打ち合わせ終わろう」
その後こてちは〇〇さんが送ってくれたメールを探して読んでみた。日◎協からの情報共有メールの転送だった。メール本文には大した記載がなく、URLが貼り付けられているのでクリックすると厚生労働省のページに飛ぶ、そのページにも概要しか記載されておらずURLが沢山貼り付けられており、その時こてちは思った。
「担当じゃないから見てなくて化学物質管理者と保護具着用管理責任者を配置して新しい化学物質管理をしていくだけかと思ってたけど、認識違いだ他の新しい要求事項もいっぱいあるじゃん。早めに準備しないとやばいな…」
そう思いながらも量が多いため、「安全担当者でもないし〜」と思いながら、取り敢えず目的(打ち合わせの宿題)に絞って告示等を開いていき、新旧対応表(告示)と化学物質管理者・保護具着用管理責任者についての詳細説明資料を見つけ印刷する。
「30ページぐらいか、まっ宿題は3時間ぐらい読めば分かるだろう」
次の日に他の仕事もしながら確認し、PMに部課長に下記内容をメール
「化学物質管理者と保護具着用管理責任者の選任義務が発生する日は令和6年4月1日になります。選任期限は令和6年4月14日です。」
「ざっくり化学物質管理者の資格要件は下記となっております
①告示に定められた化学物質管理者講習受講者
②労働衛生コンサルタント試験合格+登録された者
③労働安全コンサルタント試験合格+登録され者+化学物質に係る5年以上の実務経験
④CIH労働衛生コンサルタントの使用許可者
⑤オキュペイショナルハイジニストorインダストリアルハイジニストの資格を有する者(国際資格)
⑥作業環境測定インストラクター認定者(日本作業環境測定協会)
⑦労働災害防止団体法に定める衛生管理士に選任された者で化学物質に係る実務経験が5年以上の者」
「ざっくり保護具着用管理責任者の資格要件は下記となっております
・衛生工学管理者として6年以上の実務経験を有する
・作業環境測定士として6年以上の実務経験を有する者
・作業環境測定士として4年以上の実務経験+化学物質管理専門家教育受講
・オキュペイショナルハイジニストorインダストリアルハイジニストの資格を有する者
・労働衛生コンサルタント試験合格者
・第1種衛生管理者or衛生工学衛生管理者の免状所持者
・作業主任者
・都道府県労働局長の登録を受けた機関の安全衛生推進者講習を受講した者
(上記資格要件を満たすものでも対象の講習を受けることが望ましい)」
「現在 化学物質管理者の講習は少なく直ぐに満員になるような状況です。講習受講できない可能性がありますが、最悪〇〇さんが今月講習会に参加し資格を得られるので、〇〇さんに先生となってもらい所定の教育を実施して貰う方法もあります。」
週明けの昼下がりこてちが「22年度の事業所全体の環境マネジメントシステムの集計全然進んでなくてやべーよ。23年度の事業所全体の環境計画も作らんといかんし!騒音規制法の特定施設の集計もしないといけないし、社名変更の氏名等変更届に必要な履歴・現在・閉鎖事項全部証明書も法務局にとりに行って、県庁の高圧ガス担当の人にアポも取らんといかんしぐちゃぐちゃや〜」と思いながら仕事していると部長が
部長「教育育成計画会議が近いから、この前話をした化学物質管理者と保護具着用管理責任者の育成計画決めたいので打ち合わせの時間とって、4日後だからそれまででの時間あるところでいいから、30分ぐらいかな」
こてち「承知しました。本日はこれから法務局に行かないといけなくて、明後日以降は県の高圧ガス担当者から招集がかかる可能性がありますので、明日昼間が希望です。」
部長「んじゃ、明日14:30で」
次の日の打ち合わせ時間…
先週印刷し必要なところに付箋と赤線を引いた告示と厚生労働省の詳細説明資料、安衛法便覧やPCをカバンにいれ、打ち合わせ室に入ると課長もいると思っていたが部長だけ、部長はPCを開いて待っていた。
部長「テレビ会議の設定をしろ」
こてち「え?いや〜電子ファイルでは参考資料保存してなくて、紙でしかなくて、テレビ会議でやっても投影できませんけどいいですか?」
部長「ちげ〜よ。参考資料見ね〜から、ここで教育育成計画会議の資料決めちゃうんだよ!」
こてち「あっはい、わかりました(全然わかってない)」
部長「先週送付してきた資格要件多すぎて何の資格を何人取らせればいいかわからん。うちの事業所でどう言うふうに育成すればいいか説明しろ。」
こてち「はい、化学物質管理者から説明します。先日送った資格要件に記載されている資格と実務経験はかなり高い安全レベルの会社ぐらいしか持っていません。うちぐらいの安全レベルではどこの工場も資格すら持ってません。これから施行開始に間に合わせるためには選択肢は定められた化学物質管理者教育を受講する一択です。」
部長「選任は各工場か兼務でもいいのか?」
こてち「各工場1名以上選任が必要です。」
部長「A工場、B工場は分工場があるがそこの選任義務はあるか?」
こてち「安衛法では同じ工場と見なされるのは15分以内で移動可能な工場です。同じ工場と見なされなければ選任義務があります。」
部長「ではA工場は分工場も必要、B工場は必要ないな。A工場は〇〇にやらせて、分工場は〇〇あたりにやって貰うか、B工場は〇〇にやって貰うか。労働基準監督署に届出は必要なのか?」
こてち「届出は必要ありませんが、作業主任者のように従業員が見える場所に掲示し周知する必要があります。」
部長「化学物質管理者講習をネットで調べてるが講習の数が少ない、今の話を勘案するとかなりの数の資格者が必要となって、外部機関講習を受講できないところも出てくると思うが自分の会社で実施はできないのか?」
こてち「自分の会社で教育できますが、先生となる人には化学物質管理者と同じ資格が必要です。うちの事業所で現在現実的な案は、今月他工場の〇〇さんが化学物質管理者講習を受講されるので、〇〇さんに先生になって貰って講習を実施することです。」
部長「わかった。化学物質管理者講習受講メインに教育育成進めよう。次に保護具着用管理責任者の育成について、選任は工場毎か作業場毎か?」
こてち「法令を読む限りでは工場毎でいいですが、うちの工場の規模では保護具着用管理責任者の職務内容からすると作業場毎がいいです。」
部長「作業場毎にすると選任する人数が膨大になるが、どう言うふうに育成するのか?」
こてち「うちの事業所では作業主任者者を保護具着用管理責任者にすることが職務内容からするといいと思います。」
部長「総務とかはどうするの?」
こてち「一般生活の延長上で使用されるものはリスクアセスメントの対象外ですので、特殊な場合以外は必要はないです。抜け漏れ等が一番心配されるのは有機溶剤でも特定化学物質でもない通知対象物を扱っている可能性が高い開発・品証です。そう言う作業場は法令で定められた講習受講が必要となります。選任要件が満たす人がいない場合は環境安全管理課で第一種衛生管理者がいるので、その人を暫定的に選任し対象職場に資格者を育成して貰う方法があります。」
部長「なんとなくわかった。化学物質管理者講習受講を教育訓練計画会議の資料に入れとこう。A工場は〇〇、C工場は〇〇、うちの工場は俺とこてちね。」
こてち「へっ⁉️自分 環境で今この工場の公害防止管理者と衛生管理者、特別管理産業廃棄物管理責任者に選任されてますけど…安全衛生担当者の〇〇くんでないですか?」
部長「一応ね。一応。」
こてち「…(この人やらせる気満々だ〜😭)」
こんな感じで化学工場の環境担当「こてち」くんの1日は過ぎていくのでありました…。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
化学業界で環境安全担当をされている方々、今回の安衛法改正は工場全体をあげて実施しないといけない大変な改正と思います。少しでもそういった方々の負担が減ればと思いブログにしました。役に立てれば幸いです。
それではみなさま今日も一日ご安全に‼️